(感想)角笛2

あけましておめでとうございますすす。

知己凛(@Chikorin7)さんが発行した短歌ネットプリント「角笛2」を読みました。いくつか気になった歌について読んだイメージやらなんやらを書いてみます。

 

スノードームの雪降りおえた静けさのもうなにひとつ美化するものか

 

穂崎円さんの「吹雪のあとに」と題された一連のなかの一首。熱意とか勇気とか希望とかそういうものとは対極にあるような、孤独に完結する「静かな決意」がキリリと立つイメージ。スノードームという閉じた世界の雪の動きが、覚悟が決まるまでの気持ちの波と、かかった時間を象徴するように感じる。「の」は、後ろに「なか」を脳内補てんして読んだけど合ってたのかな…

 

「また今度できそうだったらしましょう」とダンスみたいな次の約束

 

井倉りつさんの「12月29日」と題された一連のなかの最後の一首。作中主体は、この日、新大阪駅で座っていたところを拾われて、その人の家で一夜を共にする。翌日、あっさりとこの人に別れを告げられるシーン。「会いましょう」とかじゃなくて「しましょう」というところがぼやかされていて怖い。別れを告げられているのに「ダンスみたい」ときれいに感じてしまう気持ちはわかる。

 

ちょうど鮭、そう鮭みたいなセックスをしそうなところがほんとにいとしい

 

服部かほさんの歌。この歌の前提として話者は「普通セックスは生殖とは関係なく愉しみとしてするものだ」という考えている、と解釈した。鮭は命がけで溯上して、交尾のあとは死んでしまうから、解釈からすると引き合いに出すにしては極端な感じ。必死に(真剣に?)セックスするのを嗤っている話者のイメージ。そんなに真剣になるなんて可愛いなぁって。これが犬とか、オシドリとか、ボノボとかじゃなくて、鮭なんだよね。むしろドキュメンタリー番組を見るときみたいなある種の優しい(けど上から目線のような)なまざしを感じる。鮭と「いとしい」の取り合わせがすごく印象的。

 

読んだ感想ばかり書いてないで、お前も詠めよって話ですね。

うう・・・近いうちに詠みます。企画者さん頼りですが・・・。

(感想)いてうた2016

泳二(@Ejshimada)さんが企画・製作している「いてうた 2016」を読みました。いくつかの歌について感想を書いてみます。()内は作者名です。まだまだ短歌の感想を書くのに拙い部分があるかと思います。そういった箇所があればご指摘いただけると、柴犬は喜びます。

 

射手座Twitter短歌企画 いてうた 2016

 

 

それぞれの軌道をもつてガス灯をめぐる羽虫がこんなにも星(塾カレー)

 

羽虫のことをこんな風にみたことがなかったのですごく新鮮。
「こんなにも星」という終わり方が残す余韻が好きです。
虫の動きってぼやーっと眺めて模様のように見て「気持ちわるいな」って
思って終わることが多いのに、作者は「それぞれの軌道」ってくらいに
じっと見つめていて、そのまなざしが優しいな…と思う。

 


言葉とは断絶なりや空を求むバベルの塔は数限りなく(泳二)

 

バベルの塔って神話のなかではいくつあったんでしたっけ。
一つだったような。
言語が一つでないがゆえに空に届かない塔というニュアンスよりも
言葉というのはもともとすれ違いをおこす原因にもなる
がゆえに塔が競い合うようにいくつも立ってしまう、というイメージ。
諦観した感じと塔の数を上から眺めている感じがクールだけど切ない。

 


お宙からおとりよせした星屑の
オマケとしてのドライアイス(なな)

 

会社で隣の席のおじさんが一番気に入っていた一首。
「星屑はケーキなんかな!?うまそうやなぁ!」とのこと。
ドライアイスを保冷剤でイメージした様子。
地学には詳しくないですが、地球より寒い惑星だとドライアイスが地表にあったり
するですよね。たぶん。そしたら、惑星間の通販(貿易?)ができたら
それをこういう風に使うのかもしれない…。いいな…。

 


流星を探して首を痛めつつ涙のあとのきらきら星よ(大西久季)


上を向いて歩こう」が流れる感覚。
流星群観察に寮の屋上で粘った日がありましたが、確かにこれ首痛い…!
涙のすじと流れ星のすじが重なる感じがして好きです。
「つつ」での「きらきら星」への繋がりがどう受け取ったら正解なのか…
「あと」が「後」か「跡」かできらきら星の指すものが変わりそう。

 


午後9時の約束だけど流星に乗り遅れたのでごめん遅れる(柚木緑)


チャットモンチーでこういうポップな曲があったような。
「流星」が恋人(もしくは弟)の漕ぐ自転車の愛称だったら可愛いな。なんて。
素直にSFにとっても面白い。どっちにとっても物語が個々人で作れそうな気がする。

 

 

 

(選評)珈琲日和5

知己凛(@Chikorin7)さんが発行している珈琲日和5を読んだので、少し評を書いてみます。初めてなので表記や評の文体として誤りがあったらご指摘していただけると嬉しくて、体温で珈琲を沸かします。

 

珈琲と鍋焼きうどん食べ簿記の試験勉強JBL揺れ(@kaizen_nagoya)

 

JBLってスピーカーのことなんですね。「揺れ」は音質のことを指しているのでしょうか。オーディオは詳しくないので苦しいところです。名詞が多いので焦点がバラけた感じですが、珈琲と鍋焼きうどんの組み合わせにきゅんときます。

 

カフェインはよく効くといひ投げ渡す缶がオフィスで一番冷たい(のつちえこ)

 

職場の人間関係の裏にある無慈悲なところを感じます。嬉しくない差し入れ…

投げ渡している人・冷たいと感じている人のどちら(あるいはどっちも?)が作中主体なのでしょう。私は後者で解釈しました。この後の下記の歌への繋がりが好きです。

自販機に光は絶えずBOSS,お前にも眠りつく夜があるんか

 

しあわせが零れぬように「ん」と「ん」のあいだをゆっくり運んでく(うさうらら)

 

好きな人とゆっくり過ごす貴重な時間に、相槌を打ちながら珈琲を飲んでいるところを想像しました。「(珈琲を口に)運ぶ」と脳内補完したのは、これが連作だから。珈琲の存在がなかったら、「しあわせ」が浮いてしまうかもしれない。かもしれない。

 

バス停の街灯の下自販機の、ぶん、と鳴る音また聞きたいな(くさびりんた)

 

昔、帰りのバスを待っているときに、心地よかった沈黙(キスかな?ふふふ)を体験したことを思い出しているのでしょうか。このバス停もしくは音にどんな意味が込められているのか連作の雰囲気からもう少し詳しく読み取りたかったです。

 

ぬばたまの月の形が刺さるのでミルで挽いて粉々にする(絹更ミハル)

 

「ぬばたま」を使う連作。珈琲で心静かに過ごす夜を想像しました。「刺さる」と「ミル」が対極的なイメージがします。「粉々にする」と終わらせるのが優しい印象。ミルのハンドルぐるぐるしてるのって確かに落ち着きそう……